2014年3月11日火曜日

奈良の旅人エッセイ-39-

 私は奈良で生まれ、結婚するまで奈良で数十年暮らしていました。
 奈良に長年住んでいた者として、奈良観光の際に一つ提案があります。訪れる地域について、ほんの少しでも歴史背景などの予備知識を頭に入れておくと理解がぐっと深まり、旅が何倍も充実したものになることでしょう。
 
 予備知識なしでも楽しめるけれど、あれば更に楽しめるスポットとして、私は「ならまち」をおすすめします。ならまちとは、猿沢池の南部に位置する歴史的町並みが残る地域の通称で、ほぼ全域が元興寺の旧境内にあたります。今や世界遺産として知られる元興寺、飛鳥時代に飛鳥の地に建てられた法興寺が前身で、平城京遷都に伴ってこの地に移転し元興寺となりました。  
 
 ならまち散策マップを片手にならまちを歩くと、色々な歴史的風景に出会います。
 ならまちの中心に上街道と記されているのは、古代の上ツ道とよばれる道路で、奈良盆地を南北に縦貫する大和三道の一つでした。厳密に言うとこの道は、南北真っ直ぐに通ってはい ません。散策マップを見ても、「奈良町物語館」を避けるように迂回しています。その秘密は物語館に入ればわかります。ここは元興寺の金堂が建っていたところで、物語館では金堂の礎石を見物することができます。  
 
 ところで、散策マップを更によく見ると、元興寺という標示が三つあることに気づきます。
 ならまちに元興寺が三つ?はじめは意味がわからず混乱しました。調べてみたところ、室町時代の土一揆で金堂などの主要な建物が焼失し、五重塔、観音堂、極楽坊のみが焼け残ったらしいです。その後これらは、五重塔と観音堂の一郭、小塔院、極楽坊の三寺に分立することになったそうです。
 現在、世界遺産とされているのは極楽坊のことで、1977年までは元興寺極楽坊と称していました。それまでは元興寺と言えば、芝新屋町にある塔跡を指していたらしいです が、この年以降は正式に極楽坊のことを指すようになりました。    
 
 極楽坊は有名だけど、塔跡や小塔院はどこにあるのか・・散策マップを頼りに歴史の跡を辿るのもおもしろいです。
 私個人としては、極楽坊、小塔院は真言律宗、塔跡元興寺は華厳宗と、宗派が異なるのが何故なのかが気になります。前者二つは西大寺、後者は東大寺の末寺であり、それぞれの宗派を継いでいる理由かららしいですが、そもそも元は同じ寺なのに、何故別々の末寺になったのかが謎のままで す。
 ならまちを数回歩いたら何かのヒントに出逢うかもしれません。  
 
 町の隅々に歴史の流れを感じながら、疲れたら可愛いカフェでお茶して休憩・・次はどこを訪れててどこのお店に入ろうかな・・考えただけでワクワクします。
 私は次回ならまちを訪れる際は、点在するお寺を巡りたいと思っていま す。中将姫ゆかりの尼寺である誕生寺にも行ってみたいです。もちろん、それぞれのお寺についてちょっと予習をして理解を深めてから訪れたいと思っていま す。

京都府在住 I.R.様 40代 女性