2014年2月2日日曜日

奈良の旅人エッセイ-2-「尊敬する人物は?」

「尊敬する人物は?」

その問いに、私は子供の頃から「聖徳太子」と答えてきた。
今から約一五〇〇年前の飛鳥時代の政治家。十人の人の話を同時に聞くことが出来るなど、様々な伝説が残るスーパースター。そして、私が子供の頃の一万円札と五千円札の肖像画の人物だ。
だ から中学時代、修学旅行で聖徳太子が活躍した奈良に行くことになった時は本当にうれしかった。特に、聖徳太子が創建した世界最古の木造建築である法隆寺。 その法隆寺の『五重塔』や『金堂』、そして、聖徳太子を供養するために建てられた神秘的な雰囲気が漂う八角円堂の『夢殿』を見学するのが、子供心にも 楽しみでしかたなかった。
そしていざ出発の日。私は風邪をひいて三十九度近くの高熱を出してしまった。だが、私の気持ちはすでに奈良にあ り、母親と担任の先生の反対を押し切って修学旅行に参加した。結局、奈良についても高熱のため観光には参加できず、楽しいはずの二泊三日の奈良観光はホテ ルの布団の中で過ごすこととなった。
その後、社会人となり、奈良へは仕事で何度か訪れた。その際、奈良市内にある東大寺や奈良公園、薬師寺などには行くことができたのだが、残念ながら、法隆寺がある斑鳩までは足を延ばすことが出来なかった。
それなら、観光で行けばいいのだが、家族の希望は北海道や沖縄、ディズニーランドなどばかりで、残念ながら、私の斑鳩、法隆寺への希望は後回しにされている。
聖徳太子ゆかりの地である斑鳩をのんびりと散策する。この私のささやかな夢。簡単に出来そうで、未だに叶わないでいる。しかし、もし実現した時のために、プランはすでに出来ている。
法 隆寺駅を降りて、斑鳩の田園風景の中をのんびりと歩く。法隆寺へと続く松並木の参道はさらにのんびりと味わうように歩いていく。そして、心静かに境内に 入る。やはり『五重塔』、『金堂』『夢殿』は外せない。とは言っても、たぶん、隅々まで見てしまうはずだ。この中でも、聖徳太子等身の像と伝えられている 国宝救世観音像が安置されている夢殿はじっくりと拝観したい。
法隆寺を満喫した後は、藤ノ木古墳や法起寺、法輪寺、中宮寺などを巡る。本当であれば一人で行きたいところではあるが、妻がどうしても来たいというならば(絶対に来るというに決まっているが)連れて来てあげよう。
夜は、柿の葉寿司を食べながらお酒を飲む。そして、心は聖徳太子のいた飛鳥時代へ。定かではないが、聖徳太子もお酒を飲んだと言われている。そんなことを想いながら飲むお酒はきっと格別に違いない。

神奈川県在住 H.K.様 40代男性